Fate/stay night HF2感想 光やボケの観点からHFを見てみる

まず最初に、HF2章のネタバレを含んでいるので、見ていない人はこの記事を見ないようにしてください。また、僕はたくさんの種類のアニメを見ているわけではないので、「それって他のアニメでもやっている常識では?」みたいなことも"凄い"と書いていると思います、そこはご了承をお願いします。

HFも公開されてはや一週間、凄い濃密な内容で何回も映画館に通っている方も多いのではないでしょうか。かくいう僕も何回も通っているのですが、数を重ねていくうちにufotableの技法について非常に感心する部分があったのでブログに残すに至った次第です。何回もHFを見た方にこそ、この記事の内容をもう一度映画で確認することで、いかにufotableがこの映画に全力を注いで作ってくれているのかを知ってほしいと思います。

目次

この記事は大きく分けて2つの事柄について話します。

  1. ボケ(bokeh)
  2. 光、反射、影

あれ?と思った方、そうです。キャラクターの話だけではなく、周りの景観や全体的な雰囲気がメインとなる話になります。ただ、周りの景観や演出を見るだけでも一回見れるくらいHFは丁寧に作られています

1,ボケ

 まずボケについて簡単に、

普段僕たちが見ている世界は、実際に見ているもの以外はぼかしがかかったように見えているはずです。このように、注目している物体以外にぼかしをかける表現手法をボケと呼びます。ぼかしをかけることによって、焦点があっている物体を強調する役割があります。作中だと、イリヤと公園で喋ったあとに凛と出会うシーンがわかりやすいと思います。

ufotableはHFの映画内でこの技法を多用しています。以下、気になったシーンです。みなさんも探してみてください。

  • 図書室でのライダーとの戦闘シーン、途中で本棚がたくさん倒れてきますが、本棚の距離に応じてぼかし具合が変わっています。CGでよくやられている、距離に応じてぼかしを変える手法(Depth Of Field)を使っているのはびっくりしました。参考。他にも、凛と一緒にエミヤ邸に走って戻るシーンでも距離に応じてぼかしが2パターンになっていたと思います(2Dスクロールのゲームみたいなイメージ)。
  • 図書室では、シンジが喋っているのにもかかわらず、ずっとぼかしがかかっているシーンがあります。
  • 手前にわざとモノをおいてぼかすシーンは、公園でイリヤと話すシーン(手前に雪だるま)や、雨の中、桜と士郎が向かい合って話すシーン(手前に鉄格子)など。
  • 手前に喋る人を置いてぼかすシーンは、図書館でのシンジのシーンと協会で言峰がしゃべるシーンが印象的でした。

以上のように、映画を通してボケが徹底的に使われていたのでシーン全体をよく見ると面白いです。

2,光、反射、影

HF2章では、光が非常に効果的に使われています。特にHFはわざと光源を一方向に絞り(窓のみで部屋の照明を入れないなど)、効果的に影や反射を作るような描写が多かったように感じます。上から光を入れるような描写は少なく、ほとんどのシーンで斜めから光を入れていたように思います。

  • 図書室、協会、エミヤ邸の廊下、暴食の翌日のリビングなど、意図的に部屋の照明を落としている描写は多々あります。
  • 部屋のドアの開閉で段々と廊下が暗くなる描写(桜に血を与えたあと)
  • 新都にて、桜が切り落とした街頭に照らされるシーン
  • 鉄柵を通して士郎と桜の問答を見るシーンでは、鉄格子に隠れる街頭の光が見えたり見えなくなったりを繰り返していて、それに応じて光の具合を変えている

反射について、床の種類によって影とは別にキャラクターが鏡のように写っているシーンがいくつかあります。しかも、種類によって反射の度合いを変えている徹底度合い…。また、光源の色の変化によってしっかりと照らされた物体の色が変わっていることも分かると思います。現実世界では当たり前なのですが、アニメの1シーンごとにこれが徹底されているのは凄いと思います。

  • エミヤ邸の剣道場の床(一番反射度合いが高いので、いつも掃除してるんだろうなあと思うなど)
  • 図書室の床(シンジが殴られて倒れるシーンがわかりやすい)
  • 雨のシーンの地面(桜を探している途中でイリヤと喋っているところがわかりやすい)
  • 影に襲われるシーンでは、泥の距離によって木々の色が段々と変わっていたり、凛がアサシンに魔弾で牽制するところでは、魔弾との距離に応じて木の色が変わります

影について、光源を一方向(特に斜め)に絞っていると述べましたが、これは影を効果的に描写する演出のためであると考えました。キャラクターの顔を見ていると大体半分が明かりに照らされていて、半分影になっていることに気づくと思います。影は本当に丁寧に細かいところまで描写されていました。演出の関係で物理関係がおかしくなっている描写を探すのも楽しいですよね。(製作者の意図が見えて楽しいよね??)

  • テレビの明かりでふすまに影ができるシーン(暴食の翌日)や、ライダーと廊下で話しているときに壁に写っている窓のうっすらとした影など、細かすぎますよね…
  • 演出のための描写は、桜と士郎が雨の中話すシーンの街頭の影(多分方向がおかしい)くらいしか見つけられなかったのでまた探したいですね。

最後に

正直他にも、士郎の風呂のシーンの水や桶の描写や、場所によってあったりなかったりするホコリや煙の描写など、語りたいことはたくさんあるのですが、長くなるので次回(あれば)にしたいと思います。ぜひ、違った視点でHFを見てみてください。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。